42景 インペリアル菊名裏手の高台 風景にも1つのこだわり

鶴見駅西口から馬場7丁目行きのバスに乗り込み、馬場小学校のバス停にて下車。そのままバスの進行方向へと進むと、5階建てのマンションであるインペリアル菊名に。そこから数メートルほど行くと左手に階段があり、これを上りきったところから今回の本格的な街歩きがスタートします。そこはもうインペリアル菊名の裏手になりなりますが、そこからさらにゆるい坂道が続いています。ここでの景観がちょっと変わって見えるのは、それほどの高低差があるわけでもないのに、ほんのわずかでも進みながら、後を振り返るとそれぞれの場所で、かなり違った景色が見えてくることです。しばらく進んだところで右手に路地がありますので、そこを右折して奥まで進むと家と家との間からくっきりと浮かび上がった様子で見えてくる景色は、ランドマークタワーを始めとするみなとみらいのビル群です。ただしその奥まった所から見えてくる景色を推薦するにあたって悩ましい事は、この道が奥に立ち並ぶ家屋のために設けられた私道であるらしいと言うことです。にもかかわらず、その奥まった所から見えてくる景色を、百景の一押しに推薦したい理由は、家と家とのあいだで区切られその限定された形での風景がいわば額縁入れられた一服の絵画であるかのような構図上の緊張感に満ちた景観を醸し出しているからかもしれません。ちなみにこの路地から数メートル進んだところに同じように右折する道(これも私道のようなのですが)があり、そこから見える景色は、先程の路地よりも高い位置にありますので、それなりに見晴らしは良くなって、視界もかなりの広がりを見せていますが、では見晴らしが良くなったから、それに伴って景色も良くなったかと言えば、そうとも言えないところに景観鑑賞の難しさがあると言えましょう。つまり視界は確かに広がっていったとは言え、漫然とした形でビル群の景色が見えているだけのことであり、風景としてかっちりとしたまとまりのようなものがないところに物足りなさを感じる、というのが同行したメンバーの一致した意見でした。風景をどのように捉えたらいいのか、その点に関してはなんとも微妙な問題がありますね!

43景 馬場7丁目26   馬場花木の上にジップラインを!?

インペリアル菊名の裏手をさらに進んでやがて左折すると、くねくねと曲がりくねった道を通っていくのですが、その経路を紹介するのは困難を極めますので、馬場7丁目の26番あたりと言うように地番を表示することに留めておきます。地図で確かめるとカニ山公園がすぐ下にあり、その傍には区民に親しまれている馬場花木園があるはずなのですが、家々が立て込んでいて、それとおぼしき光景を確認することができません。それでも一軒一軒の間をつぶさに点検しながら目を凝らして行きますと、家と家の間から花木園の様子が見えるところもあり、ここならおすすめ、と言う場所を二ヶ所ほど探し当てました。そのうちの1カ所では花木園の東屋と古民家である藤本家の屋根の1部が見えています。もう1カ所は花木園内にある竹林や樹木が密集している景色を眺めることができて、家々がアリのつけ入る隙間もないくらいに立ち並んでいる今となっては、貴重な景観地といえます。はるか下方に見える花木園を見下ろしながら、メンバーの1人がこんな一言を。
「ここから花木園までジップラインでつなげてみたら、面白いだろうなぁ!」
「それって名案!」「実現したら、鶴見区の新名所になるかも」「・・・この辺の住民にとっては迷惑なことだろうなぁ」
勝手にイメージを膨らませながら、とどまるところを知らないくらいに会話が広がっていきました。

第44景 馬場7丁目27   馬蹄形丘陵地の先端に立つ

43景の場所からさらに南方向へ進むと、すぐそばに下に続く階段が2カ所あり、そこを下っていくと、突然目の前の視界が大きく開かれ、そのずっと向こうにはすくっと屹立した姿を見せるランドマークタワーが目に飛び込んできます。しかも途中に何の障害物もありませんので、みなとみらいの林立するビル群も併せて眺めることができます。それだけにこれほど見通しの良い景観地はそれほどありませんので、いつまでもこのまま大切にしてほしいとの願望にも似た思いが募るばかりであります。
この場所は、ドローンを飛ばして、この辺の景色の全貌をとらえるとすれば、馬場花木園を取り囲むようにして、丘陵地が馬蹄形の形に広がっていて、ここはその片方の最先端部に位置していると言うことになるでしょうか。といっても左手側にあるはずの花木園は人家が立ち並んでいるので、全く見ることができませんし、目の前にある階段を下に降りていったなら、馬場の赤門とその公園があるはずなのに、その影も形も見えません。このように鶴見区きっての名所がたくさんあるはずなのに、どれ1つとして見えないと言うないないずくしの中にあって、この場所から建功寺の森を越えて、みなとみらいを象徴するたくさんの建造物が手に取るように見えていると言う事は、ここがみなとみらいのビル群をより良く見せるための特別な場所として存在しているのではないか、とさえ思えてきます。
メンバーの1人が「この階段とそれに続く坂道は、周りの景色とマッチングしていて、絵になるような風景を醸し出しているね!」まさにその通りだと同調した見事な景観です。

第45景 北寺尾6丁目1   新横浜方面にもし怪獣が現れたら!

もと来た道を引き返し馬場小学校方面へと進んで、まもなく町名が馬場7丁目から北寺尾6丁目へと変わります。そして馬場小学校の裏手にある道まで出てくると家と家との間に小さな階段があり、そこを下りきったところがお目当ての場所です。目の前に何が見えるかと言えば、言うまでもなく、あの新横浜駅に隣接するプリンスホテルの姿です。ただこの場所から見えてくる当ホテルの様子は、家々の屋根の上にぽっかりと浮かんで見えているせいなのか、見るからに巨大な建造物であるかのような姿を見せています。と言うのも、家々が建ち並んでいて、その上に突然姿を現していますので、人間の目の錯覚が働いてしまうからなのでしょうか、ただあの丸いビルが異様に大きく見えてくるのです。
「ここで想像力を働かせて、あのビルが何に見えるのかと考えてみるというのはどうだろう?」「それなら、あのビルがシン・ゴジラだとしたらどうなのかなぁ?新横浜にシン・ゴジラが現れると考えてみたら、面白いね。」「確かにあの怪獣が新横浜に現れたら、きっとあんな風に見えるわよねー!」「ちょっと待って!今あのビルが少し動いたみたい!」「えっ、ホント?」「うーん、やっぱり気のせいだったみたい・・・」
「ネジに見立ててみるというのはどうでしょう。地球の裏側から巨大なネジが打ち込まれて、その一部があそこに飛び出していると見立ててみるのはどうでしょうか?」
巨大なネジが南米のブラジルあたりから打ち込まれて、新横浜にその一部が飛び出してきた!確かにビルの形が丸い上に、その色ツヤといい、姿かたちといいネジそのものであり、下から飛び出したと言うのも立派な見立てです。
「私はあそこにチンアナゴがいるかのように見えますが・・・」なになにチンアナゴ!例の水族館で地底から細長い姿で、水の動きに合わせて揺れているあのチンアナゴですか?!水族館で見るチンアナゴは小さくて可愛い姿をしていますけど、もしもあのように巨大なチンアナゴが大空に向かってゆらゆらと揺れているとしたらシン・ゴジラが出現することよりも、ずっと不気味に見えるかもしれません・・・。

第46景 北寺尾6丁目3   生産緑地畑前 富士山の眺望が秀逸

馬場小学校の裏手の道をそのまま北へと進んでいくと、眼下に広々とした生産緑地があり、一面に畑が広がっていて、視野を遮る障害物は何もありません。それだけにここから見える富士山とあの丸いプリンスホテルとが仲良く並んでいる景色は出色の景観地といえます。ただこの日の天気は快晴ではあったものの、やはり春霞のようなモヤみたいなものがかかっていて、景色そのものもやや白っぽく見えて、青空に映えるはずの富士山の山容をとらえることが出来ませんでした。しかも間が悪いと言うのでしょうか、富士山の上空には白い雲がかかっていて霊峰富士と言うような神々しい雄姿を収めることができない事は、かえすがえすも残念なことでした。この辺に住む人たちの弁を借りれば
「ここから見える富士山の景色は、鶴見区の中でも最高の眺めではないか」
と自慢する位に素晴らしい眺望ができる好適地でもあります。富士山と並んで屹立しているチンアナゴ、いやプリンスホテルのビルも幾分霞んで見える富士山に遠慮してなのか、45景で見た景色より心なしか小さく見えました。この日の写真ではお目当ての富士山の景色がイマイチでしたので、別の日に改めて撮影したものを紹介します。
この写真にははっきり写っていませんが、富士山の手前に工事中のところがありあります。ここはかって鶴見区で話でも超がつく位に有名なゴルフ場がありましたが、3年前に廃業して、現在は分譲マンションの造成中です。マンションの完成後は、ここから見える景色も大きく変わっていくかもしれませんので、その意味でも令和5年現在の景色を残しておくことも次代への記録として貴重な存在になるかもしれません。

第47景 馬場2丁目33   みなとみらいのビルが密集

46景を後に生産緑地沿いに進んでいくと、T字路にぶつかりますので、そこを右折して坂道をひたすら登っていきます。ただこの辺の地名や地番はかなり複雑になっていて、馬場7丁目だったかと思うといつの間にか馬場2丁目に変わると言うようになんとも不規則な地名構成になっています。だから、散歩中に道を尋ねられても鶴見区在住30年歴のビギナーズ(?)にとっては、戸惑うばかりの醜態をさらしてしまうこともしばしば。それはともかく坂道を登り切ってしばらく進むと、左手に細い路地があり、そこをちょっと入っていくと、目の前にお目当ての景観地が出現!ここからの見晴らしはなかなかのもので、ランドマークタワーやコンチネンタルホテルを始めとするみなとみらいのビル群の全貌を視界に収めることができます。ただここから見える展望は44景と同じ方向から見ているような気がするのですが、44景と比べてみると、みなとみらいのビル群の数がはるかに多く見えるのは何故でしょうか。よくよく目を凝らしてみると、どうも横浜駅周辺のビル群も重なって見えているようで、44景から見る景色とは方向性が少し違っていると言うことになるでしょうか。というのも、この場所は花木園を取り囲むように連なっている馬蹄形丘陵地の中央部あたりに位置しているようですので、見える景色もそれなりの違いがあるのかもしれません。ちなみにちょっと右手側に寄ってみるみますと、ベイブリッジの頭部がくっきりと浮かんでいるのが見えていて、その点でも44景との違いを確認することができます。目の前にある階段を降りていくと、紛れもなく馬場花木園の裏門に通ずる道に続いています。

第48景   馬場2丁目15付近    家と家との間に見事な富士山

47景の場所をちょっと引き返し、元来た道を右手方向に道なりに進んでいくと、しばらくして十字路の右手方向に位置する電柱に、馬場2丁目15番と住所表示をした看板が目に留まります。そこを右手に折れてちょっと坂道を下ったあたりが目指すべき景観地です。とは言え、そこが見晴らしの良い場所であると言うより、むしろ角の家とマンションとの間にきれいな富士山が見えるからーと言うことで、百景のひとコマに入れています。同様に、ここから右手の道を数軒先まで進んでみたところからも、家と家とのわずかな隙間から富士山の雄姿を望むことができます。残念ながら、この日はきれいな富士山を拝することができませんでしたので、後日きれいに晴れ渡った日にこの2カ所の写真を掲載しましたので、ご紹介しておきます。
鶴見区の住民としては、富士山ぐらいはいつでも見ることができるものと思いがちですが、雨の日や曇天の日は論外として、快晴の日でも風の吹き方や時間の経過によって時々刻々と変化していて、そのためによく見える時と見えない時があったりして、それほど簡単に富士の素晴らしい山容に巡り会えるものでは無いことを実感させられた次第です。
この場所のすぐ下には、紛れもなく馬場花木園があり、この道をそのまま置いていくと花木園の裏手門に通じています。ここは花木園を取り囲むようにして、馬蹄形の丘陵地ほぼ真ん中あたりに位置していることになるでしょうか?

第49景 馬場5丁目3    突然現れた想定外のものとは?

 48景の地点から元来た道を引き返して、水道道方面へと進んでいくと「サヨナラ、サヨナラ」と言う独特の語り口で一躍一世を風靡した淀川長治さんの旧宅のあった場所に出て来ます。といっても、平屋建てのお宅は既になく、2階建ての邸宅になっております。こうしたことは後世への記録として留めておくことも必要かと考えて、あえて紹介してしてみました。

そして50景となるはずの馬場神明社への参道を通り越しながら、さらに進むと左手へと入る路地があり、そこを曲がって進んでいきます。道幅はとても狭く、両側にはびっしりと家々が立ち並び、右手側には家と家との間からちらりちらりと貯水塔の姿が見えています。やがて、二股になる坂道の向こうに忽然と輝くかのように現れたのがあの電波塔でした。こんなにたくさんの家々が密集していて、人家以外に何も見えないようなところに、突然このような形で電波塔が現れてくるという想定外の景色の展開に、ちょっとした感銘を覚えました。

第50景 馬場神明社 この場所からみなとみらいが見える!?

49 景を後にさらに道なりに進んでいくと、馬場神明社の裏手の入り口が見えてきます。
いよいよ50景です。
「この場所からみなとみらいが見える」と言う事は、かってこの神社をずっと見守り続けてきた宮守さんから教えられたことでした。しばしば参拝に訪れていくうちに宮守さんと顔なじみになり、若かりし頃の半生を振り返り旧国鉄時代に鉄道マンとして活躍してきた来歴を語ってくれることもありました。そんな宮守さんが「この場所からみなとみらいが見えるんだよ」とニコニコ顔をしながら話してくれました。神社の周りは全て家、家、家と言うように人家に取り囲まれていて、それ以外の景色など見えるはずもないだろうと思い込んでいましたので、ひょっとしたらこの宮守さんは担ごうをしているのではないだろうかと訝しんでおりました。すると「嘘だと思うなら、この階段を上ってごらん」と本殿の前にある階段を差し示します。数段しかないこの階段を上ったら何が見えると言うのか、と半信半疑で上まで登ると「そこで後ろを振り返ってごらん」との指示がありましたので、その通りにしてみると、思わず目を見張る思いになりました。これはすごい!こんなことってほんとにあるんだ!とすっかり感じ入ってしまいました。
今回、同行したメンバーの人たちにも同じ体験をしてもらいたいと密かに思い立ち、あえて参道から入らず裏手の方から境内に進んで、本殿の階段を上って参拝することにしました。そして一同がくるりと向きを変えてみると「鳥居のど真ん中にみなとみらいが見える!」と感嘆することしきりでした。この神社に秘められている隠し味であるかのようなこの景色こそ、まさに50景にふさわしい景観地かと思い、一押ししてみた次第ですが、いかがでしょうか?
今は亡き宮守さんからの"伝言"を次代に伝え残すことも、百景の会の努めなのではないかとその責任を感じた次第です。

第51景 馬場6丁目17   彼方に見える山影はどこの山?

神明神社の別の裏門から抜け出して、ちょっと進んだだけで急に見晴らしの良いところに出てきて、下に続く坂道の途中で立ち止まると、目の前には獅子ケ谷通りの街並み、獅子ケ谷市民の森、そして送電線をつなぐ鉄塔を取り囲むように人家が密集して立ち並んでいます。いつもならその遥か向こうに見えるはずの山陵が春霞に霞んで見ることができません。
「いつもだったら見えるはずのあの山影が残念ながら、今日はよく見えませんが、一体どこの山なのか?
 方角から考えて、筑波山か浅間山だとしたら、文句なしの百景入りになるのですが…」
「筑波山がこの方向に見えると言うのはまず無理だと思いますよ。それに浅間山っていうのもあまり遠すぎだな。」
「方角から想定すると奥多摩山系の山々ではないかなぁ・・・」
山影を確かめることはできないまま会話だけが弾んで行きましたが、みんなの想定としては奥多摩山系と表記してみることで落着しました。とは言えあくまで想定上の結論でありますので、なんとなく収まり具合が良くなくて、何とかならないものかともどかしく思っていると、後日願ってもないような助っ人が現れて、次のようなコメントをメールで寄せてくださいました。
「・・・気になったので私なりに調べてみました・・・西北西から西北にかけて連なる山は左から大菩薩、奥秩父、奥多摩の山と思われます・・・」こんな助っ人のアドバイスをいただいて、やっと心が落ち着きを取り戻しました。ご協力ありがとうございました。
写真は後日撮影したもので、山影ははっきりと写っています。