第63景 眼下に広がる4本の鉄道線路新鶴見 人道橋(A)

「尻手」と言う地名が鶴見区内にあるのは言うまでもないことですが、尻手と言う駅は川崎市内にあります。そのことに何の違和感を抱かせないというなんとも不思議な駅が今回の街歩きの出発点です。このたびのイベントを開催するにあたり、地元出身のFさんにガイド役を務めてもらい、いざ出陣!歩き始めて、数分もたたないうちに、地名は早くも尻手から矢向へと変わり、有名な古刹や二ケ領用水路地跡をめぐり、やがて進行方向を左手と大きくカーブして「町の原っぱ」へ。すると目の前に鉄道線路をまたぐようにして現れた人道橋。この人道橋は立派な建造物でエレベーターも設置され、バリアフリーに対する配慮も行き届いています。早速橋の上に登ってみると、下には鉄道線路が4本並んでいて、川崎方面を眺めてみると、右手側にはかつて横須賀線と言われ、今では湘南新宿ラインの線路が、そして左手側には本年(令和5年)から乗り入れが始まった相鉄JR直通線「(旧貨物線)の線路が通っています。この相鉄JR直通線が開通した直後に、所用で渋谷に行くために、相鉄線の羽沢横浜国大という駅から乗り込んだことがありますが、確か各駅停車という触れ込みだったのに次の停車駅が武蔵小杉で十数分の間ノンストップの状態だったので、ちょっと面食らってしまったことがあります。そのことを思い返しながら、あの時乗った列車もこの下を通っていたのだと考えながら、次の停車駅と言われた武蔵小杉の駅は、あのビルの向こう側にあるんだと思いますと、なんとも感慨深いものを感じました。

第64景 かすかに見えるふれ〜ゆの煙突   新鶴見人道橋(B)

この人道橋の上でさっきとは向きを変えて、横浜方面を眺めてみると何が見えるのか。この日は9月上旬であるのに典型的な猛暑日とあって、ジリジリと照りつける日差しが肌を焦がすことおびただしいものがありました。ただ街歩きそのものは過去2回を振り返って、台風の接近にたたられ中止を余儀なくされたり、歩いている時間帯に水しぶきが上がるくらいの豪雨に見舞われたりしてとても街歩きを楽しむ雰囲気ではなかったこともあり、この日だけでも好天に恵まれたことがありがたいと、感謝の気持ちを噛み締めながらの街歩きでした。そんな思いを込めて人道橋の上から目を凝らしてみましたが、見えているのは4本の鉄道線路と送電線の鉄塔、そのはるか向こうに白く見える入道雲といったところでしょうか。しばらく景色を楽しんでいるうちに、スタッフの1人が突然「右手の建物の横に見えるのは、もしかしてふれ〜ゆの煙突ではないか」と言い出しました。どれどれと一同目を凝らしてその方向をみつめながら「確かに方向的にもふれ〜ゆの煙突で間違いないようだなぁ」と確認しあいました。もちろんふれ〜ゆの煙突と言っても、あくまで通称としてのいい方であり、正確にはふれ〜ゆに隣接している横浜市焼却工場の煙突ということになるでしょうか。ただ景色としては送電線の鉄塔や通信会社の基地局等が林立していて、写真にうまく収めようと頑張ったのですが、肝心要の煙突の画像をばっちりとらえきれなかったことが辛いところです。

第65景 相鉄JR直通線の上に立って 江ケ崎跨線橋(A)

人道橋を通って線路の向こう側にわたるとそこは地名も矢向から江ヶ崎へと変わります。新鶴見公園を過ぎ、神社の鳥居やホームセンターの建物を横目に見ながら進んでいきますと、川崎市との市境の道路に出てきてその地点で右折すると緩やかな坂道が現れてきます。両側には巨大なマンションが建設され、それに併設されている駐車場も見るものを圧倒してしまうかのような大規模な建造物であります。そのダラダラ坂を登りきると目の前には、湘南新宿ラインの線路が登場してくるのですが、そこの高台を江ケ崎跨線橋と言うようです。なぜ跨線橋なのかと言えば、その下にJRの貨物線が通っていたからということであり、現在はーと言うよりも今春には相鉄JR直通線が開通していますので、跨線橋の下をの通過する列車の本数も以前よりはかなり多くなっているはずです。さて湘南新宿ラインの線路を背にしてこの跨線橋からの景観やいかにといいますとー。両側に大きなマンションがあるものの、それ以外に高い建物がありませんので、跨線橋からの見通しはなかなかのものがあり、かなり遠方まで目視することができます。よく晴れた日にはくっきりと浮かぶ富士の美麗を眺めることができるようなのですが、あいにくこの時間帯にあつては西の空全体に白い雲が広がっていて姿形も見えません。「今朝はここからきれいな富士山の姿が見えたので、さぞかし皆さんにお楽しみいただけると喜んでいたのですがー。ご期待に答えられずなんとも残念です」とはガイド役のFさんの言葉。いえいえ今回は残念な結果となりましたが、いつの日にかFさんが立派な富士山の写真をゲットして、第65景をもっと賑やかに花を添えて下さることを期待しています。

第66景 二つの鉄道に挟まれたT字路 江ケ崎跨線橋(B)

この跨線橋はかなり変わった構造になっていて、かつてはJRの貨物線(現在は相鉄JR直通線)をまたぐように構築されていますが、正面には湘南新宿LINEが通っていますので、上に登りきったところで道路が両側に分かれていて、T字路状のつくりになっています。このT字路を川崎方面に向かって降りて行きますと、ちょっとした珍しい光景が広がっています。向かって右手側には高架橋の湘南新宿LINEが通っていて、その横に歩道と車道があり、さらにその向こう側には相鉄JR直通線が跨線橋の下を潜り抜けて通っています。つまり二つの鉄道線路の間に道路と歩道が挟まれる形で作られていて、そのような立体的な構造になっているところが、この界隈の特色と言えるのではないでしょうか。そしてその延長線上に67景が極めつけとも言うべき光景を見せてくれます。

第67景 昔の面影を今に残して 江ケ崎踏切

先程の丁字路になっている跨線橋を降りきって、フラットなところまでやってくると、目の前に踏切が現れました。この踏切の様子を説明するとなるとちょっと途方に暮れてしまいそうに。常識的に考えるなら湘南新宿LINEは高架線となって上部を走行していますし、もう一方の相鉄JR直通線は跨線橋をくぐり抜けたら、そのまま川崎方面へと走り去っていくわけですので踏切等があるはずもないのですが、そこがややこしいことに線路がもう1本だけ通っていて、そのレールが跨線橋のT字路から降りてきた道路と交差しますので、正真正銘の踏切を構成しています。この1本の線路は、相鉄JR直通線と南武線をつなぐレールであり、現在も立派に利用されていて貨物線としての面影を今に残しています。あっさりと踏切のある事情が分かってしまえば「何だ!たったそれだけのことかいなぁ」と軽くいなされてしまいそうですが、あなどるなかれ!この貨物線は武蔵野線から南部支線を経由して羽田空港の下を通り、やがて京葉線と武蔵野線につながって首都圏を一周するという壮大な鉄路で結ばれていて、なんともロマンに満ちた線路でもあります。上部に湘南新宿LINEが、そしてすぐその横には相鉄JR直通線が通っていて、しかもその間をぬように敷設された貨物線のレールのために特別に踏切が設けられたということで、ちょっと珍しい景観を呈しているということなのですが!